すいすいの睡
仰向けなった私の身体の
輪郭を辿るように小さな自転車が
とても小さな自転車が走り始めた
重くて頑丈そうな黒い鉄製の自転車
決して軽快とはいえないその動き
だが一度として私に触れることなく一定の速度で進んで行く
ペダルを漕いでいるのは父だ
少し前屈みランニングシャツと半ズボン裸足に下駄履き
キッと見開いた目真一文字の口元筋肉質の脚
間違いなく父だ
幼いころ座った補助椅子は
黄緑色のペンキが塗られていてところどころ褪せていた
握り手にぎゅっとつかまった後の手のひらの金臭さ
背後から伝わる父の息遣いと体温
自転車は走り続ける
ふと眠りから覚めた今でも依然として
すいすいと
まるで曲芸のように