utashyaのブログ

明暗の日々を駆け抜ける

壇上の薔薇

その人のバイオリンの音色を始めて聴いたのは

音楽大学を卒業後アメリカに留学する前に地元盛岡で開かれた

コンサート会場でのことだった

隣の席にはまだ元気だった母が座っていた

 

淡い花模様のドレスを着たその人はとても初々しく

曲と曲の合間のはにかむようなしぐさは

弦の振動と相まって高揚する鼓動も伝わってくるような気がした

 

あれから10年以上の時が流れ海外各地で研鑽を重ねてきたその人の

演奏会がふたたび盛岡で開かれた

薔薇色のドレスを身に纏い一層魅力を増したその姿に見とれた

初々しさはそのままに その一方で音色と表情は

計り知れない努力と情熱そして経験を重ねたこその自信に満ちていた

 

時折ピチカートの弾ける音が心地良かった

その人の白く細い指が小さな弧を描く時

一瞬だけ弓が弦から離れ宙を彷徨うような動きに魅了された

 

プログラムの絶妙な構成が見事だった

いつかまたその人の音色を聴く機会を

そしてその機会に遭遇した時の自身の反応に

期待を抱かずにはいられない

 

f:id:utashya:20160118175111j:plain