センター・4
14年前のこと
凍てつく深夜の道を家族4人でバスセンターに向った
その時運転していたのは夫
カナダに向う長男の東京行き深夜バスを見送るためだった
人影のないセンターの入り口付近に停まった車
荷物を肩に引き寄せ「じゃ行ってきます」と車内を覗いて皆にひと声掛けた息子
たまらず車から降りて彼を抱きしめた私
運転席に座ったまま外に出ようとはしなかった夫
思い出せない その時の次男の様子
帰りの車の中でまだ涙が止まらなかった私に
「大袈裟だな」と夫がつぶやいた
スタッドレスタイヤが路上の凍った雪の塊をプツプツと弾く音がした
それは家族四人が揃った最後の夜だった
写真提供 Haruhiko.M
盛岡バスセンターの一階待合室
建物全体は老朽化し外見は雑居ビルと化したがこの場所は開業当時と変わらない