月ノメリハリ
目の前にある実像と今カメラに収められた画像とを何度も見比べずにはいられない。
その月はどう見ても前のめりなのだ。
近隣の家の灯りはほとんど消えてしまった深夜のドアの開閉音は騒音にも等しいことは承知の上なのだが、私の日常がそのまま宵の空に転写されているのではなないかと思われて仕方がない。
衝動的に生きる日常はスリルに満ちている。と同時に危うくもある。顔面が水面ぎりぎりの所に留まっている状態に近い。もはやそれが当たり前ともなるとさして苦痛を感じることもないのだが、疲労感に襲われることもしばしばである。
月の満ち欠けが途方もない時間の中で繰り返されてきたように、人の感情もそれとまた同様。満月半月三日月おぼろ月それ以外にも呼び方のない月が無数に存在するように、人の生き方も千差万別なのだろう。明日の自分がきょうの自分と同じという保証はどこにもないのだから一瞬一瞬を大切にしたいと思う。
「ノメリの月」をもう一度瞼に焼き付け玄関のドアを閉め鍵を掛ける。カチッ!