八幡遇・最終拾
さて 八幡宮の鳥居の両側には道路に沿って年代物の石塀ある
等間隔に配置された四角柱の塀の距離はおよそ2百メートル余り
石柱のそれぞれには個人名が彫られている
中にはかつての八幡芸者の名前と思われるものもある
建立の際の寄付金の証としての名簿のようなものだろう
ふと界隈で米屋を営んでいた父方の祖父を思い出した
祖父は秋祭りの山車の音頭あげを担当していたほど八幡宮には深く係わっていた
事あるごとに店の中には関係者の人達が大勢集まっていたことを記憶している
ということは寄付をしていても不思議ではない
もしかしたらと文字のひとつひひとつを確認してみるとそれらしきものを発見
全体が大分風化してきているので確信は持てないが村上○蔵三文字は認識できた
何十年も前 扇子をかざし澄んだテノールの音頭上げの声が蘇った
八幡宮に照会すればわかりそうなものだがあえて追求するのはやめた
不透明なままというのもこの場合はいいかもね おじいちゃん
見上げると鳥居のそばの梅の老木には地味ながら花が咲き始めていた
もう少し手入れしてあげればよいのにな
梅の花・・・そうだ・・・私はこの後ケーキを買うのだ!うめぇケーキを
八幡宮よありがとう さらばじゃ!
<完>